第6章 贈与者に相続が開始した場合 - 第1節 切替確認を受ける場合

切替確認とは、贈与税の納税猶予制度(租税特別措置法第70条の7)の適用を受けている経営承継受贈者に係る経営承継贈与者の相続が開始した場合において、租税特別措置法第70条の7の3の規定により相続により取得したものとみなされた非上場株式等に係る相続税につき贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度(租税特別措置法第70条の7の4)の適用を受けるための前提となる手続です。

中小企業者が、過去に特別贈与認定中小企業者であった場合(つまり、認定を受けてから5年以上経過した者である場合を含みます。ただし認定が取り消された者である場合は除きます。)又は現に特別贈与認定中小企業者である場合であって、経営承継贈与者の相続が開始したときには、下記に掲げる事項のいずれにも該当していることにつき都道府県知事の確認(切替確認)を受けることができます。この切替確認を受け、一定の要件を満たす場合には、贈与税の猶予対象となっている非上場株式等について、相続税の納税猶予制度に切替えることで、引き続き猶予の特例を受けることができます。ただし、経営承継贈与者の相続税の申告期限までに、相続税の納税猶予制度の適用を受ける旨を記載した相続税の申告書等を税務署へ提出する必要があります。

なお、特別贈与認定中小企業者が合併により消滅した場合には当該合併に係る吸収合併存続会社が、特別贈与認定中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合には当該株式交換等に係る株式交換完全親会社等が、本条の確認(切替確認)を受けることができます。

要件 事業継続
期間内※
事業継続
期間経過後
中小企業者であること
風俗営業会社に該当しないこと
資産保有型会社等に該当しないこと
総収入金額零円の会社に該当しないこと
従業員数が1人(一定の場合は5人)以上いること
上場会社等に該当しないこと
後継者の同族で過半数の株式を有していること
後継者が同族内で筆頭株主であること
後継者以外の者が黄金株を保有していないこと
○:要件を満たす必要がある
-:要件を満たす必要がない
※ 事業継続期間内に先代経営者(贈与者)が死亡した場合には、臨時報告書(様式第15)及び切替確認申請書(様式第17)の両方を提出します。

切替確認を受ける場合の事業継続期間

事業継続期間内に先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合で切替確認を受けるときの事業継続期間は、相続が開始した日に関わらず贈与税の申告期限から5年間です。

そのため、この期間内は毎年年次報告をする必要があります。また、雇用維持要件の計算期間も当該期間となりますので、注意が必要です。

また、臨時報告を相続開始の日の翌日から8ヶ月以内にする必要があります。詳しくは第3章第3節「臨時報告」をご覧ください。

なお、事業継続期間経過後に先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合には臨時報告は不要です。

切替確認を受けるための要件(円滑化法規則13①)

贈与税から相続税の納税猶予制度への切替確認の要件を満たすには、以下の要件を満たす必要があります。なお、報告書は、様式第17を使用します。

第十三条 特別贈与認定中小企業者等(特別贈与認定中小企業者(特別贈与認定中小企業者であった者を含み、第九条第二項の規定により当該認定が取り消された者を除く。以下この条において同じ。)及び第七条第二項に規定する申請書を提出している中小企業者並びに特別贈与認定中小企業者が合併により消滅した場合における吸収合併存続会社等及び特別贈与認定中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合における株式交換完全親会社等をいう。以下同じ。)は、当該特別贈与認定中小企業者等(同項に規定する申請書を提出しようとしている中小企業者を含む。)に係る経営承継贈与者の相続が開始した場合には、次の各号のいずれにも該当すること(特別贈与認定中小企業者であった者の経営承継贈与者の相続が開始した場合には第七号に掲げるものを除く。)について、都道府県知事の確認を受けることができる。
一 削除
二 当該相続の開始の時において、当該特別贈与認定中小企業者等及び当該特別贈与認定中小企業者等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと。

贈与認定中小企業者等及び特定特別子会社は、贈与者の相続開始時において、風俗営業会社に該当しないことが必要です。

三 当該相続の開始の時において、当該特別贈与認定中小企業者等が資産保有型会社に該当しないこと。
四 当該相続の開始の日の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該特別贈与認定中小企業者等が資産運用型会社に該当しないこと。
五 当該相続の開始の日の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該特別贈与認定中小企業者等の総収入金額が零を超えること。

贈与認定中小企業者等は、贈与者の相続開始時において、資産保有型会社に該当しないこと、資産運用型会社に該当しないこと、総収入金額が零円を超えることが必要です。

六 当該相続の開始の時において、当該特別贈与認定中小企業者等の常時使用する従業員の数が一人以上(当該特別贈与認定中小企業者等の特別子会社が外国会社に該当する場合(当該特別贈与認定中小企業者等又は当該特別贈与認定中小企業者等による支配関係がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有する場合に限る。)にあっては五人以上)であること。

申請者が1人以上の常時使用する従業員がいることが必要となります。なお、下記①②の双方に該当する場合にあっては5人以上となります。
① 申請者の特別子会社が外国会社に該当すること。
② 申請者又はその支配関係法人が、その特別子会社の株式又は持分を有すること。

七 当該相続の開始の時において、当該特別贈与認定中小企業者等及び当該特別贈与認定中小企業者等の特定特別子会社が上場会社等に該当しないこと。

贈与認定中小企業者等及びその特定特別子会社は、贈与者の相続開始時において、上場会社等に該当しないことが必要です。

ただし、事業継続期間経過後に贈与者の相続が開始した場合には、本要件を満たす必要はありません。

八 当該特別贈与認定中小企業者等の経営承継受贈者が、当該特別贈与認定中小企業者等の代表者(代表権を制限されている者を除き、第九条第四項各号のいずれかに該当する者を含む。)であって、当該相続の開始の時において、当該経営承継受贈者に係る同族関係者と合わせて当該特別贈与認定中小企業者等の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該代表者が有する当該特別贈与認定中小企業者等の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。

経営承継受贈者が特別贈与認定中小企業者の代表者であって、その同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で最も多くの議決権を有している者であることが必要です。

九 当該特別贈与認定中小企業者等が会社法第百八条第一項第八号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行している場合にあっては、当該相続の開始の時において当該株式を当該特別贈与認定中小企業者等の経営承継受贈者以外の者が有していないこと。

拒否権付株式(=黄金株)を発行している場合には、経営承継受贈者以外の者が有していると確認を受けることはできません。