株式交換等の類型

株式交換と株式移転は、既存の株式会社を完全子会社とする完全親子会社関係を創設するものです。既存の株式会社又は合同会社が完全親会社となるものが株式交換であり、新設される株式会社が完全親会社となるものが株式移転です。

株式交換においては、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者が完全親会社(Y1社)となる場合と完全子会社(X社)となる場合があります。

株式移転においては、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者は必ず完全子会社となります。

株式交換等があった場合における認定の承継

株式父換又は株式移転(以下「株式交換等」といいます。)により特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者が他の会社(完全親会社)の完全子会社となった場合には、当該特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者の株式等の全部を完全親会社が有することになり、原則として認定が取り消されることになります(円滑化法規則9②四・五・③四・五) 。

ただし、この場合において、株式交換完全親会社(又は株式移転設立完全親会社)が株式交換効力発生日(又は株式移転設立完全親会社の成立の日)において、一定の要件に該当することについて都道府県知事の確認を受けたときは、当該株式交換完全親会社(又は株式移転設立完全親会社)は、株式交換効力発生日(又は株式移転設立完全親会社の成立の日)に、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継したものとみなされます(円滑化法規則11①) 。特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者が株式交換等により他の会社(完全親会社)の完全子会社となった場合にいかなるときも認定が取り消されることとなると、合理的な企業行動を阻害するおそれがあるため、一定の場合に完全親会社が特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継する旨を規定しています。

【図】

以下の認定を承継するための要件、手続及び効果に関する解説においては、上図のとおり、承継前の特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者をX1社(株式交換)又はX2社(株式移転)、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継する会社をY1社(株式交換)又はZ社(株式移転)といいます。

株式交換等があった場合に認定を承継するための要件

贈与税 相続税
(株式交換等があった場合の認定の承継)
第十一条 第九条第二項第四号、第五号及び第八号の規定にかかわらず、特別贈与認定中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合において、株式交換完全親会社等が、株式交換がその効力を生ずる日又は株式移転設立完全親会社の成立の日(以下「株式交換効力発生日等」という。)に次に掲げるいずれにも該当することについて次条第十四項の確認を受けたときは、株式交換完全親会社等は、株式交換効力発生日等に、特別贈与認定中小企業者たる地位を承継したものとみなす。
2 第九条第三項第四号、第五号及び第八号の規定にかかわらず、特別相続認定中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合において、株式交換完全親会社等が、株式交換効力発生日等に次に掲げるいずれにも該当することについて次条第十四項の確認を受けたときは、株式交換完全親会社等は、株式交換効力発生日等に、特別相続認定中小企業者たる地位を承継したものとみなす。

認定の地位を承継するに当たっては、以下の要件を満たす必要があります。報告書は、様式第14を使用します。

贈与税 相続税
一 当該特別贈与認定中小企業者の経営承継受贈者が当該株式交換完全親会社等及び当該特別贈与認定中小企業者の代表者であること。 一 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人が当該株式交換完全親会社等及び当該特別相続認定中小企業者の代表者であること。

X1社(株式交換)又はX2社(株式移転)の経営承継受贈者又は経営承継相続人が、株式交換効力発生日等において、Y1社及びX1社(株式交換)又はZ社及びX2社(株式移転)の代表者であることを意味します。

株式交換の場合には、X1社の経営承継受贈者又は経営承継相続人が、株式交換と同時にY1社の代表者に就任するときと、従前からY1社の代表者であるときがあります。

株式移転の場合には、X2社の経営承継受贈者又は経営承継相続人が、Z社の成立と同時にその代表者に就任することが必要です。

また、X1社又はX2社の経営承継受贈者又は経営承継相続人は、完全子会社となったX1社又はX2社の代表者であることも必要です。

ただし、X1社(株式交換)又はX2社(株式移転)の経営承継受贈者又は経営承継相続人がY1社及びX1社(株式交換)又はZ社及びX2社(株式移転)の代表者であるものの、定款その他の規定によりその代表権を制限されている場合は、本号に該当しません。

また、X1社(株式交換)又はX2社(株式移転)が認定を受けた後、その経営承継受贈者又は経営承継相続人が精神障害者保健福祉手帳(1級)などの交付を受け、その旨を証する書類を都道府県知事に提出した場合において、当該経営承継受贈者又は経営承継相続人がY1社及びX1社(株式交換)又はZ社及びX2社(株式移転)の代表者でないとき等の取扱いについては、合併の場合と同様です(円滑化法規則11③)

贈与税 相続税
 二 当該株式交換完全親会社等の株式等以外の財産(当該特別贈与認定中小企業者の株主又は社員に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び当該経営承継受贈者以外の株主であって株式交換等に反対するものに対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されていないこと。  二 当該株式交換完全親会社等の株式等以外の財産(当該特別相続認定中小企業者の株主又は社員に対する剰余金の配当等として交付される金銭その他の資産及び当該経営承継相続人以外の株主であって株式交換等に反対するものに対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されていないこと。

Y1社(株式交換)又はZ社(株式移転)が、株式交換等の対価としてX1社(株式交換)又はX2社(株式移転)の株主に対してY1社又はZ社の株式等以外の財産を交付した場合には、Y1社又はZ社は、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継することができません。

ただし、株式交換等の比率を調整するために交付する金銭や経営承継受贈者又は経営承継相続人以外の株主であって株式交換等に反対するものから株式買取請求を受けて交付する金銭は、本号にいう「株式等以外の財産」から除外されます。

贈与税 相続税
 三 当該特別贈与認定中小企業者の経営承継受贈者が、当該経営承継受贈者に係る同族関係者と合わせて当該株式交換完全親会社等の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該経営承継受贈者が有する当該株式交換完全親会社等の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。  三 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人が、当該経営承継相続人に係る同族関係者と合わせて当該株式交換完全親会社等の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該経営承継相続人が有する当該株式交換完全親会社等の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。

X1社(株式交換)又はX2社(株式移転)の経営承継受贈者又は経営承継相続人が、その同族関係者と合わせてY1社(株式交換)又はZ社(株式移転)の総株主等議決権数の100分の50を超える議決権の数を有し、かつ、当該経営承継受贈者又は当該経営承継相続人が有するY1社又はZ社の株式等に係る議決権の数が同族関係者の中で最も多い、という意味です。

贈与税 相続税
 四 当該株式交換完全親会社等が上場会社等、風俗営業会社又は資産保有型会社のいずれにも該当しないこと。

五 株式交換の場合にあっては、当該株式交換効力発生日等の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該株式交換完全親会社等が資産運用型会社に該当しないこと。
 四 当該株式交換完全親会社等が上場会社等、風俗営業会社又は資産保有型会社のいずれにも該当しないこと。

五 株式交換の場合にあっては、当該株式交換効力発生日等の翌日の属する事業年度の直前の事業年度において、当該株式交換完全親会社等が資産運用型会社に該当しないこと。

Y1社(株式交換)又はZ社(株式移転)が上場会社等、風俗営業会社、資産保有型会社又は資産運用型会社のいずれかに該当する場合には、Y1社又はZ社は、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継することができません。

贈与税 相続税
 六 当該株式交換完全親会社等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと。  六 当該株式交換完全親会社等の特定特別子会社が風俗営業会社に該当しないこと。

Y1社(株式交換)又はZ社(株式移転)の特定特別子会社(X1社又はX2社を含む。)が風俗営業会社に該当する場合には、Y1社又はZ社は、特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継することができません。

株式交換等があった場合における認定の承継の効果

株式交換完全親会社等であるY1社又はZ社が特別贈与認定中小企業者又は特別相続認定中小企業者たる地位を承継した場合には、以後、Y1社又はZ社は、円滑化法施行規則第12条第1項・第3項に基づく報告をする必要があります。

また、株式交換完全親会社等であるY1 社又はZ 社が円滑化法施行規則第9条第2項各号・第3項各号のいずれかに該当したときには、認定が取り消されることになります。この場合、認定の取消事由、報告事項及び報告の際の添付書類については、次のように読み替えられます(円滑化法規則11④・⑤) 。

認定の取消事由のうち常時使用する従業員数については、各贈与報告基準日又は各相続報告基準日における認定会社(株式交換・移転後はX1社又はX2社も含む。)の従業員数の合計を当該贈与報告基準日又は相続報告基準日の数で除した人数が、贈与の時又は相続開始時におけるX1社又はX2社の従業員数と、株式交換効力発生日等の直前のY1社(株式交換の場合。株式移転の場合は、Z社は新設会社のため、株式移転設立完全親会社の株式交換効力発生日等の直前の従業員は存在しません。)の従業員数に事業継続期間の残存期間に応じた調整計算を行った後の人数の合計の8割を下回ることと読み替えられます。