相続税の納税猶予制度の適用となる前提となる認定に係る取消事由(円滑化法施行規則9③)

3 都道府県知事は、法第十二条第一項の認定(第六条第一項第八号の事由に係るものに限る。)を受けた中小企業者(以下「特別相続認定中小企業者」という。)が、次に掲げるいずれかに該当することが判明したときは、その認定を取り消すことができる。
一 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人が死亡したこと。

経営承継相続人(後継者)が死亡した場合には、認定が取り消されます。

二 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人が当該特別相続認定中小企業者の代表者を退任したこと。

経営承継相続人(後継者)が代表者を退任した場合には、認定が取り消されます。ただし、施行規則第9条第4項各号のいずれかに該当する場合には、代表者を退任し又は代表権が制限された場合であっても、認定取消事由に該当しないものとみなします。

【施行規則第9条第4項各号】

  • 精神障害者保健福祉手帳(1級)の交付を受けたこと。
  • 身体障害者手帳(1級又は2級)の交付を受けたこと。
  • 要介護認定(要介護五)を受けたこと。
  • 上記に類すると認められること。
三 相続雇用判定期間(当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人の相続税申告期限の翌日から当該認定の有効期限までの期間をいう。以下この号において同じ。)の末日において、当該相続雇用判定期間内に存する当該特別相続認定中小企業者の相続報告基準日(第十二条第三項の相続報告基準日をいう。以下この号において同じ。)におけるそれぞれの常時使用する従業員の数の合計を当該相続雇用判定期間内に存する当該相続報告基準日の数で除して計算した数が、当該認定に係る相続の開始の時における常時使用する従業員の数に百分の八十を乗じて計算した数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた数。ただし、当該相続の開始の時における常時使用する従業員の数が一人のときは、一人とする。)を下回る数となったこと。

相続雇用判定期間(経営承継相続人の相続税申告期限の翌日から当該認定の有効期限までの期間をいいます。)の末日において、当該相続雇用判定期間内の各相続報告基準日(相続税申告期限の翌日から起算して1年を経過するごとの日)における常時使用する従業員の数の合計を計算し、これに当該相続報告基準日の数で除すことによって、当該相続雇用判定期間内の従業員数の平均人数を計算します。そして、この平均人数が、相続の開始の日の常時使用する従業員の数の8割(端数切捨て)を下回った場合には、認定が取り消されます。

四 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人及び当該経営承継相続人に係る同族関係者の有する当該特別相続認定中小企業者の株式等に係る議決権の数の合計が、当該特別相続認定中小企業者の総株主等議決権数の百分の五十以下となったこと(第八号に規定する特別相続認定株式一部贈与について第十二条第十四項に基づく都道府県知事の確認を受けた場合を除く。)

経営承継相続人(後継者)とその同族関係者で有する議決権の数が、総株主等議決権数の50%以下となった場合には、認定が取り消されます。

ただし、経営承継相続人(2代目)から次の後継者(3代目)に「特別相続認定株式一部贈与※が行われた場合には、認定は取り消されません。

※ 特別相続認定株式一部贈与とは、相続税の納税猶予を受けている後継者(2代目)が、納税猶予株式の一部を次の後継者(3代目)に贈与し、その後継者(3代目)が納税猶予を受ける場合における贈与のことです。

五 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人に係る同族関係者のうちいずれかの者が、当該経営承継相続人が有する当該特別相続認定中小企業者の株式等に係る議決権の数を超える議決権の数を有することとなったこと(第八号に規定する特別相続認定株式一部贈与について第十二条第十四項に基づく都道府県知事の確認を受けた場合を除く。)

経営承継相続人(後継者)が同族関係者の中で筆頭株主でなくなった場合には、認定が取り消されます。

ただし、経営承継相続人(2代目)から次の後継者(3代目)に「特別相続認定株式一部贈与」が行われた場合には、認定は取り消されません。

六 当該特別相続認定中小企業者が株式会社である場合にあっては、その経営承継相続人が当該認定に係る相続又は遺贈により取得した当該特別相続認定中小企業者の株式(租税特別措置法第七十条の七の二第一項の規定の適用を受けている又は受けようとする株式に限る。)の全部又は一部の種類を株主総会において議決権を行使することができる事項につき制限のある種類の株式に変更したこと。

七 当該特別相続認定中小企業者が持分会社である場合にあっては、その経営承継相続人が有する議決権を制限する旨の定款の変更をしたこと。

株式会社である場合には、経営承継相続人(後継者)が取得した納税猶予対象株式につき、議決権制限株式に変更した場合に認定が取り消されます。

持分会社である場合には、経営承継相続人の議決権を制限する旨の定款の変更をした場合に認定が取り消されます。

八 当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人が当該認定に係る相続又は遺贈により取得した当該特別相続認定中小企業者の株式等(当該特別相続認定中小企業者が合併により消滅した場合にあっては当該合併に際して交付された吸収合併存続会社等の株式等(会社法第二百三十四条第一項の規定により競売しなければならない株式を除く。)、当該特別相続認定中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合にあっては当該株式交換等に際して交付された株式交換完全親会社等の株式等(同項の規定により競売しなければならない株式を除く。))のうち租税特別措置法第七十条の七の二第一項の規定の適用を受けている又は受けようとする株式等(以下「認定相続株式」という。)の全部又は一部を譲渡したこと(当該特別相続認定中小企業者が会社分割により吸収分割会社又は新設分割会社となる場合において、吸収分割がその効力を生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に、吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の株式又は持分を配当財産とする剰余金の配当をしたことを含み、当該経営承継相続人が当該特別相続認定中小企業者の代表者を退任した場合(第四項各号のいずれかに該当するに至った場合に限る。)において、当該経営承継相続人が当該特別相続認定中小企業者の認定相続株式の一部について法第十二条第一項の認定に係る贈与(以下「特別相続認定株式一部贈与」という。)をしたことについて、第十二条第十四項に基づく都道府県知事の確認を受けたときを除く。)

経営承継相続人(後継者)が先代経営者から相続又は遺贈により取得した株式等を譲渡(贈与を含みます。)した場合には、認定が取り消されます。なお、会社分割を行った場合であって、吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の株式等を配当財産とする剰余金の配当があったときには、会社分割によって特別相続認定中小企業者の株式等の価値が低下するのと引換えに、吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の株式等を取得したということができ、経済実質的に株式等の譲渡により対価を得たことと同一視できるため、同様に、認定が取り消されます。

ただし、経営承継相続人(2代目)にやむを得ない事情が発生し、認定中小企業者の代表者を退任し、次の後継者(3代目)に「特別相続認定株式一部贈与」が行われた場合には、認定は取り消されません。

九 当該特別相続認定中小企業者が会社法第百八条第一項第八号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行している場合にあっては、当該株式を当該特別相続認定中小企業者の経営承継相続人以外の者が有することとなったこと。

「会社法第108条第1項第8号に掲げる事項についての定めがある種類の株式」(いわゆる拒否権付株式( =黄金株))を経営承継相続人(後継者)以外の者が有することになった場合には、経営承継相続人(後継者)の意思決定に対して拒否権を発動できる者がいることになり、経営承継相続人の経営権が不完全なものになるため、認定が取り消されます。

十 当該特別相続認定中小企業者が解散したこと。

会社が解散した場合には、認定が取り消されます。

合併による消滅は、会社の解散事由ですが(会社法第471条第4号)、合併の効力発生時に法人格が消滅するため、認定は、原則としてその効力が消滅します(円滑化法施行規則10①本文)ので、取消事由から除外しています。

「会社法その他の法律の規定により解散したものとみなされる場合」とは、例えば、会社法第472条による休眠会社のみなし解散があります。

十一 当該特別相続認定中小企業者が上場会社等又は風俗営業会社に該当したこと。

上場会社等又は風俗営業会社に該当した場合には、認定が取り消されます。

なお、特別相続認定中小企業者が認定後に事業の拡大や成長等に伴い資本金や従業員数が増加し中小企業者に該当しないこととなった場合であっても、認定取消事由には該当しません。

十二 当該特別相続認定中小企業者が資産保有型会社に該当したこと。

十三 相続認定申請基準日の属する事業年度以後のいずれかの事業年度において、当該特別相続認定中小企業者が資産運用型会社に該当したこと。

資産保有型会社又は資産運用型会社に該当した場合には、認定が取り消されます。この資産保有型会社又は資産運用型会社の判定に当たっては、①実質的に事業実態のある会社(第6条第2項第1号及び第2号のいずれにも該当する会社であって、同項第3号イからハまでに掲げるいずれかの業務をしている会社をいいます。)が除かれるとともに、②その特定資産の計算に際して、実質的に事業実態のある特別子会社(第6条第2項第1号及び第2号のいずれにも該当する会社であって、同項第3号イからハまでに掲げるいずれかの業務をしている会社をいいます。)の株式又は持分が除かれます。

十四 相続認定申請基準日の属する事業年度以後のいずれかの事業年度において、当該特別相続認定中小企業者の総収入金額が零であったこと。

相続認定申請基準日の属する事業年度以後の事業年度において、総収入金額(営業外収益と特別利益は除きます。)がゼロであった場合には、事業実態がないことから、認定が取り消されます。

十五 当該特別相続認定中小企業者の特定特別子会社が風俗営業会社に該当したこと。

特定特別子会社が風俗営業会社に該当した場合には、認定が取り消されます。

なお、特定特別子会社が認定後に大会社や上場会社等に該当した場合であっても、認定取消事由には該当しません。

十六 第十二条第三項及び第七項の報告をせず、又は虚偽の報告をしたこと。

十七 偽りその他不正の手段により当該認定を受けたこと。

円滑化法施行規則第12条第3項(事業継続報告(年次報告))、第7項(随時報告)に係る報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合、あるいは偽りその他不正の手段により認定を受けた場合には、認定が取り消されます。

十八 当該特別相続認定中小企業者が会社法第四百四十七条第一項又は第六百二十六条第一項の規定により資本金の額を減少したこと。

資本金の額の減少を行った場合(株式会社の場合は会社法447条第1項、合同会社の場合は同法626条第1項)には、認定が取り消されます。ただし、減少資本金額の全額を準備金とする場合及び欠損填補目的の減資(会社法第309条第2項第9号イとロに該当する場合)については、認定は取り消されません。

なお、会社法第447条第3項に該当した場合であっても、欠損填補目的の減資でないときは本号に該当します。

十九 当該特別相続認定中小企業者が会社法第四百四十八条第一項の規定により準備金の額を減少したこと。

準備金の額の減少を行った場合には、認定が取り消されます。ただし、減少準備金額の全額を資本金とする場合及び欠損填補目的の準備金の額の減少(会社法第449条第1項但し書きに該当する場合)については、認定は取り消されません。

二十 当該特別相続認定中小企業者が組織変更をした場合にあっては、当該組織変更に際して当該特別相続認定中小企業者の株式等以外の財産が交付されたこと。

組織変更を行った場合において、組織変更後の会社の株式等に代えて、組織変更後の会社の株式等以外の財産(金銭等)を、後継者が受け取った場合、組織変更により当該株式等以外の財産を受け取った部分につき、経済実質的に組織変更前の会社の株式等の譲渡を行ったことと同一視できるため、認定が取り消されます。

二十一 当該特別相続認定中小企業者から第五項の申請があったこと。

特別相続認定中小企業者が自ら認定取消申請を行う場合には、認定が取り消されます。

認定の取消しの手続き(円滑化法施行規則9③二十一)

特別相続認定中小企業者が自ら認定取消の申請を行う場合には、様式第10の2を使用します。