第2章 都道府県知事の認定について-第3節 都道府県知事の認定(相続)

相続税の納税猶予制度の認定要件(円滑化法規則6①八)

相続税の納税猶予制度の適用を受けるには、以下の要件等を満たすことが必要です。

相続税の納税猶予制度における主な要件

① 先代経営者(被相続人)要件

  • 会社代表者であったこと
  • 相続の開始の直前において、先代経営者と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主であったこと等

② 後継者(相続人)要件

  • 相続開始の直前において対象会社の役員(先代経営者の親族外の方も適用されます。)であること
  • 相続の開始後、後継者と同族関係者(親族等)で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ、同族内で筆頭株主となること等

③ 対象会社要件

  • 中小企業であること
  • 上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
  • 資産保有型会社等(自ら使用していない不動産等が70%以上ある会社やこれらの特定の資産の運用収入が75%以上の会社)ではないこと
    ※ ただし、一定の事業実態(従業員数、店舗事務所の有無、事業内容等)がある場合には、資産保有型会社等に該当しないものとみなされます。

④ 事業継続要件

納税猶予を継続するためには、主に以下に示す要件を満たす必要があります。

要件 5年間 5年経過後
後継者が会社の代表者であること
雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
後継者が同族内で筆頭株主であること
上場会社、風俗営業会社に該当しないこと
猶予対象となった株式を継続保有していること ○※
資産保有型会社等に該当しないこと
○:要件を満たす必要がある
-:要件を満たす必要がない
※ 株式を譲渡した場合には、その譲渡した部分に対応する相続税と利子税を納付します。保有し続ける株式に対応する相続税は、引き続き納税が猶予されます。

相続税の納税猶予制度の適用の前提となる認定の手続き(円滑化法規則7③)

中小企業者が第12条第1項の認定(相続税の納税猶予制度の認定)を受けようとする場合の基本的手続きについては以下のとおりです。

申請書は、様式第8を使用します。

相続税の納税猶予の認定を受けるために必要な手続き

株式等の遺産分割

認定を受けるためには、認定申請時までに適用を受けようとする株式等の遺産分割が済んでいる必要があります。

都道府県知事への認定申請(8ヶ月以内)

相続開始の日から5ヶ月を経過する日(相続認定申請基準日)から相続開始の日から8ヶ月を経過する日までの間に、本社が所在する都道府県庁へ認定申請をします。

相続税の申告・納税

相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、所轄税務署へ相続税の申告をします。

この際、都道府県知事の認定書とその他の必要書類の添付が必要です。

また、納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署長に提供する必要があります。

相続認定要件(円滑化法施行規則6①八)

相続税の納税猶予のための認定要件

相続税の納税猶予制度の適用を受けようとする後継者は、相続開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日以後、認定の時まで、中小企業者の代表者であり、相続又は遺贈(死因贈与を含みます。)により当該中小企業者の株式等を取得し、相続税を納付することが見込まれることと、円滑化法施行規則第6条第1項第8号に掲げるいずれにも該当する必要があります。

バースくん

認定申請書を提出するときまでに遺産分割が済んでいない株式等は対象外です。

八 当該中小企業者が次に掲げるいずれにも該当する場合であって、当該中小企業者の代表者(当該代表者の被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)の相続の開始の日の翌日から五月を経過する日以後において代表者である者に限る。以下この号において同じ。)が相続又は遺贈により取得した当該中小企業者の株式等(次条第三項に規定する申請書を提出する時において、当該相続又は遺贈に係る共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないものを除く。)に係る相続税を納付することが見込まれること。

(対象会社)上場会社等・風俗営業会社非該当要件

認定を受けようとする中小企業者は、上場会社等又は風俗営業会社に該当していないことが必要です。

「風俗営業会社」とは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」といいます。)第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業(ソープランド、テレクラなど)を営む会社です。なお、バー、パチンコ、ゲームセンターなどは、風営法の規制対象事業ですが、性風俗関連特殊営業ではありませんので、本号イの要件を満たします。

イ 当該相続の開始の時以後において、上場会社等又は風俗営業会社のいずれにも該当しないこと。

(対象会社)資産保有型会社非該当要件

認定を受けようとする中小企業者は、相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日以後において、「資産保有型会社」に該当しないことが必要です。

ロ 当該相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度の開始の日以後において、資産保有型会社に該当しないこと。

※ 留意点

  1. 貸借対照表に計上されている帳簿価額を用いて計算します。
  2. 減価償却資産・特別償却適用資産・圧縮記帳適用資産については、それぞれ対応する減価償却累計額・特別償却準備金・圧縮積立金等を控除した後の帳薄価額を用います(直接減額方式にあわせて計算します)。
  3. 貸倒引当金・投資損失引当金等の評価性引当金については、資産の帳薄価額の総額・特定資産の帳薄価額の合計額から控除しません。

(対象会社)資産運用型会社非該当要件

認定を受けようとする中小企業者は、相続認定申請基準事業年度において、「資産運用型会辻」に該当しないことが必要です。
※相続認定申請基準事業年度とは、下記①と②のすべての事業年度をいいます。そのため2以上の事業年度となる場合もあります。
① 相続開始の日の属する事業年度の直前の事業年度
② 「相続開始の日の属する事業年度」から「相続認定申請基準日(相続開始の日から5ヶ月を経過する日)の翌日の属する事業年度の直前の事業年度」までの期間における各事業年度

ハ 相続認定申請基準事業年度(当該相続の開始の日の属する事業年度の直前の事業年度及び当該相続の開始の日の属する事業年度から相続認定申請基準日(当該相続の開始の日の翌日から五月を経過する日をいう。以下同じ。)の翌日の属する事業年度の直前の事業年度までの各事業年度をいう。以下同じ。)においていずれも資産運用型会社に該当しないこと。

(対象会社)総収入金額要件

相続認定申請基準事業年度における損益計算書上の総収入金額(営業外収益と特別利益は除きます。)が零の場合には、認定を受けることができません。

ニ 相続認定申請基準事業年度においていずれも総収入金額が零を超えること。

(対象会社)従業員数要件

申請者が下記① ②の双方に該当する場合にあっては5人以上、その他の場合にあっては1人以上の常時使用する従業員がいることが必要となります。
① 申請者又はその支配関係法人が、その特別子会社の株式又は持分を有すること。
② 申請者の特別子会社が外国会社に該当すること。

ホ 当該相続の開始の時において、当該中小企業者の常時使用する従業員の数が一人以上(当該中小企業者の特別子会社が外国会社に該当する場合(当該中小企業者又は当該中小企業者による支配関係がある法人が当該特別子会社の株式又は持分を有する場合に限る。)にあっては五人以上)であること。

(対象会社)上場会社等・大会社・風俗営業会社非該当要件(特定特別子会社)

相続開始の時以後認定を受けるまでの間において、申請者の特定特別子会社が上場会社等、大会社又は風俗営業会社に該当する場合には認定を受けることができません。

特定特別子会社とは、特別子会社のうち、その特別子会社の議決権を保有する代表者の親族の範囲が「代表者と生計を一にする親族」に限定されたものです。つまり、「会社」と「その代表者」と「当該代表者と生計を一にする親族」が合わせて総株主等議決権数の過半数を有している会社です。

なお、認定取得後において特定特別子会社が風俗営業会社に該当することとなった場合には、円滑化法施行規則第9条第3項第15号により認定が取り消されます。

ヘ 当該相続の開始の時以後において、当該中小企業者の特定特別子会社が上場会社等、大会社又は風俗営業会社のいずれにも該当しないこと。

後継者の満たすべき要件

申請者の代表者(以下「経営承継相続人」といいます。)が次のすべての要件に該当することが必要です。

まるちゃん

代表者が2人以上いる場合も想定されるけど、その場合どうなるの。


バースくん

支援措置が受けられるのは1つの会社で1人の代表者に限定しているよ。複数の代表者に対して支援措置を講じると、株式の分散による経営の不安定化を招来する可能性があること、また、世代を経る毎に株式がねずみ算的に分散するおそれがあるからなんだ

ト 当該中小企業者の代表者が次に掲げるいずれにも該当する者(二人以上あるときは、そのうちの当該中小企業者が定めた一人に限る。以下「経営承継相続人」という。)であること。

(後継者)同族過半数・同族内筆頭株主要件

相続又は遺贈により申請者の株式等を取得した代表者であって、相続の開始の時において当該代表者に係る同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者の中で筆頭株主(同族関係者の中に当該代表者と同じ割合の議決権数を有する株主がいても当該代表者は筆頭株主となります。)である者です。

なお、代表者であっても、定款その他の規定により代表権を制限されている場合には、認定を受けることができません。

まるちゃん

代表権の制限の例としては、「複数の代表者が共同して会社を代表すべき旨」や「経営承継相続人は手形を振り出してはならない旨」などがあるのね。

(1) 当該相続又は遺贈により当該中小企業者の株式等を取得した代表者(代表権を制限されている者を除く。以下この号において同じ。)であって、当該相続の開始の時において、当該代表者に係る同族関係者と合わせて当該中小企業者の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該代表者が有する当該株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者が有する当該株式等に係る議決権の数も下回らない者であること。
(2) 削除

(後継者)相続直前役員就任要件

当該相続の開始の直前において申請者の役員であることが必要です。ただし、被相続人が60歳未満で死亡した場合には当該相続の開始の直前において役員である必要はありません。

「役員」とは、株式会社の場合には取締役、会計参与及び監査役を意味し(会社法第329条第1項)、持分会社の場合には業務を執行する社員を意味します。定款に業務を執行する社員について別段の定めがなければ、すべての社員が「業務を執行する社員」となります(会社法第590条第1項)。

(3) 当該相続の開始の直前において当該中小企業者の役員であったこと(当該代表者の被相続人が六十歳未満で死亡した場合を除く。)

(後継者)株式継続保有要件

代表者は、相続又は遺贈により取得した当該中小企業者の株式等のうち納税猶予の対象とする部分のすべてを所有し続けていることが必要です。

(4) 当該相続の開始の時以後において、当該代表者がその被相続人から相続又は遺贈により取得した当該中小企業者の株式等(当該相続の開始の時以後のいずれかの時において当該中小企業者が合併により消滅した場合にあっては当該合併に際して交付された吸収合併存続会社等の株式等(会社法第二百三十四条第一項の規定により競売しなければならない株式を除く。)、当該相続の開始の時以後のいずれかの時において当該中小企業者が株式交換等により他の会社の株式交換完全子会社等となった場合にあっては当該株式交換等に際して交付された株式交換完全親会社等の株式等(同項の規定により競売しなければならない株式を除く。))のうち租税特別措置法第70条の7の2第1項の規定の適用を受けようとする株式等の全部を有していること。
(5) 削除

(先代経営者)同族過半数・同族内筆頭株主要件

代表者の被相続人が、その死亡の直前において当該中小企業者の代表者である場合には、当該相続の開始の直前において当該被相続人に係る同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者(当該被相続人の経営承継相続人を除きます。)の中で筆頭株主(同族関係者の中に当該代表者と同じ割合の議決権数を有する株主がいても当該代表者は筆頭株主となります。)であることです。

当該被相続人が当該相続の開始の直前において当該中小企業者の代表者でない場合には、当該被相続人が当該代表者であった期間内のいずれかの時及び当該相続の開始の直前のいずれにおいても当該被相続人に係る同族関係者と合わせて過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者(経営承継相続人を除きます。)の中で筆頭株主(同族関係者の中に当該代表者と同じ割合の議決権数を有する株主がいても当該代表者は筆頭株主となります。)であることです。

(6) 当該代表者の被相続人(当該相続の開始前において、当該中小企業者の代表者であった者に限る。)が、当該相続の開始の直前(当該被相続人が当該相続の開始の直前において当該中小企業者の代表者でない場合には、当該被相続人が当該代表者であった期間内のいずれかの時及び当該相続の開始の直前)において、当該被相続人に係る同族関係者と合わせて当該中小企業者の総株主等議決権数の百分の五十を超える議決権の数を有し、かつ、当該被相続人が有する当該中小企業者の株式等に係る議決権の数がいずれの当該同族関係者(当該中小企業者の経営承継相続人となる者を除く。)が有していた当該株式等に係る議決権の数も下回らなかった者であること。

(先代経営者)先代経営者が贈与者でないこと

申請者が特別贈与認定中小企業者として認定を受けている場合又は認定を受けていた場合には、その会社は特別相続認定中小企業者として認定を受けることはできません。

※ 特別贈与認定中小企業者の先代経営者(経営承継贈与者)に相続が開始した場合に、当該特別贈与中小企業者等に係る株式について相続税の納税猶予の適用を受けたいときは、切替確認を行ってください。改めて、特別相続認定中小企業者として認定を受けることはできません。

(7) 当該中小企業者が特別贈与認定中小企業者等(第十三条第一項の特別贈与認定中小企業者等をいう。)である場合にあっては、当該代表者の被相続人が当該特別贈与認定中小企業者等の経営承継贈与者(経営承継受贈者に係る贈与者をいう。以下同じ。)でなかったこと。

(先代経営者等)黄金株不保有要件(後継者以外)

会社法第108条第1項第8号に掲げる事項についての定めがある種類の株式とは、いわゆる「拒否権付株式( =黄金株)」です。拒否権付株式を発行している場合には、経営承継相続人以外の者が有していないことが、認定を受けるための要件となります。

チ 当該中小企業者が会社法第百八条第一項第八号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行している場合にあっては、当該相続の開始の時以後において当該株式を当該中小企業者の代表者(当該中小企業者の経営承継相続人となる者に限る。)以外の者が有していないこと。

(対象会社)従業員8割維持要件(認定申請基準日まで)

相続認定申請基準日における常時使用する従業員の数が、相続の開始の時の8割を下回っている場合には、認定を受けることはできません。

リ 相続認定申請基準日における当該中小企業者の常時使用する従業員の数が当該相続の開始の時における常時使用する従業員の数に百分の八十を乗じて計算した数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた数。ただし、当該相続の開始の時における常時使用する従業員の数が一人のときは、一人とする。)を下回らないこと。